一話

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「さってとー。やるかね」 シエルが立っている眼前に広がるただっ広い真っ白な空間。ここで野球でもやれと言われても、余裕で出来る広さ。 サッカーにしようか?いや、問題はそこではないのだが。 ただ、野球場のように何もない訳ではない。サッカー場のようにゴールネットがある訳ではない。 あるのは、ただの宝具。それも三十三個の天界に伝わる、光の装飾品。 「良い感じに溜まってンな」 三十三個の宝具を一個一個確認するように、ゆっくりと歩を進める。 カツン、カツンとヒール音が反響する。 ショーケースのような硝子棚に並べられた装飾品。照明に当たって乱反射を繰り返す宝石。 「さぁ、俺様の為に解放して貰うぜ・・・先代大天使様方」 皮肉に、かつ偉そうに。空間の中心に立ち、手を軽く広げる。解放の刻だ。 シエルの足元が淡く、波打つように光る。 「・・・いや、ちょっと待てよ。やっぱりマズイ・・・かな」 顔を青ざめた状態で、若干グロッキーなシエル。展開した光の陣もションボリしながら薄れていく。 「こんな事やったら、俺様この地位にいれなくね?ただでさえ、めちゃくちゃ厳しい天界だぜ・・・」 顎に手を添え、ブツブツと独り事。 「威張れない、いや・・・最悪、天界追放ってのも・・・」 その場で蹲り、唸るシエル。今からやろうとしている事を冷静に考えたようだ。 後ろから近付く気配にも気付かずに。 「何やってるんですか、シエル様」 「ぎゃあああああああ!!」 「うわ、なんですか?!」
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