6人が本棚に入れています
本棚に追加
「なん、何だ・・・リルか。脅かすなよ!!」
相当驚いたのか、胸に手をやり息を荒らげ怒り狂うシエル。若干、涙目だ。
「シエル様こそ、こんなところで何をやっていらっしゃるのですか?常に座って踏ん反り返っている貴方が」
「毒舌にも程があるぞ、リル」
「それは失礼。ですが・・・」
続きを言おうとしたリルの目に飛び込んだ、シエルの切なげな表情。
それは何年仕えようと見た事がない苦しくも、儚い笑みだった。
「リルは知らないと思うがな。約束しちまったんだ・・・あいつと」
強く結ばれた掌。滴り落ちる赤が、汚れのない真っ白な床に跡を付けた。
苦虫を噛んだような表情のシエルに言葉が詰まってしまったリル。
「シエル・・・様」
「・・・という訳でぇ、今からやる事は見て見ぬ振りしてくれ。俺様からの一生のお願いだ」
「・・・・・・は?」
どう言葉を掛けて良いか分からず、手探りしようとしていた直後のことだった。
いつも通りの表情、いつも通りの上から目線。いつもと違うのは〈一生のお願い〉を使ったくらいだ。
「俺様からの一生のお願いを聞いたんだ。約束してくれるよな?な?」
つい数分前の顔は何処へやら。いつもの皮肉、かつ腕組みスタイルに逆戻り。
「えぇ・・・と。何をやるおつもりで?」
「見てりゃわかる」
最初のコメントを投稿しよう!