一話

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「ここに来るのも久々だな」 解放した場所から遥か遠く、誰も寄り付かない、寄せ付けない天空の庭園。 その下に、目的の少女がいる。 薄暗い地下に降る螺旋階段。蝋燭の微かな灯火の中、ゆっくりと降っていくシエル。 何段ものから連なる階段を、一段一段降って行くと共に思い出される少女。 「ったく・・・壊すなと何度も言ったのにな」 降りる度に増える大穴。暗闇だけの筈が、上の明るさが目に滲みる。 力は抑えている筈が、どうも少女には効かないようだ。 「ていうか、長過ぎやしないか、この階段」 大分降りた筈なのだが、中々見えてこない目的。 「誰だ!!こんな長く造ったのは!!」  ※自分です。 ぶつくさ文句を言いながら、駆け下りる。 やっと着いた階段の最後。そこで見た、まだ果てしなく続く長い廊下。 「だから誰だ!!こんな長ったらしいモン造ったのは!!」 ※だから、自分です。 大声で喚き散らして歩いていると、前方から飛んでくる『なにか』 瞬時に反応したが、シエルの右頬を僅かに掠って壁に大きな穴を開ける。 頬に生暖かい感触、どうやら血が流れているようだ。 「おいおい・・・随分な挨拶じゃねぇかよ。会ったら覚えておけよ、あのクソアマ」 流れる血を乱暴に袖で拭い、今から会いにいく少女に聞こえていないであろうご挨拶。 ヒール音を響かせ、所々大穴が開いたレンガ造りの廊下を足早に歩く。 すっかり煤けてしまった壁。見るに耐えない無残な色。陰気なまでに湿った空気。 「よくこんな所に二百年も住めるもんだな・・・」 着いた、漆黒の牢。隙間に見える一人の人影。 「・・・なぁ・・・葵よ」 「・・・・・・黙れ、腐れ腹黒偽り天使」
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