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「久々に会って一言目が、これかよ!他に言うことないのか!!」
「ない。あんたと話すと、腐りそうで・・・心から身体から全てにおいて」
『葵』と呼ばれた少女の細い腕には見合わない、銀の桎梏。ジャラリ、ジャラリと音を立てて少女に纏わりつく。
腰ほどの髪は乱雑に伸び、黒ずんでしまっている。
伸びた髪の隙間から時折見える、大きなはっきりとした瞳の暗緑色。
「さっきは随分な挨拶だったじゃねぇか、葵。俺様の頬に掠りやがって」
「は?・・・あぁ、蚊でも飛んでたのかと思ったら。あんただったのね」
無表情のまま、葵は言った。
「てめぇ、マジで覚えておけよ。後で殴る蹴るの応酬した後、五回くらいどつく」
「あっそ。どうせ、私はここから出ることはないか。あと何年先かな」
「いや、今からお前には此処を出てもらう」
「・・・・・・・え?」
思いがけない言葉がシエルの口から飛び出したのか、葵は気の抜けた声を出した。
「嫌なのか?あれだけ暴れて入るのを拒んでたんだ。出たいだろ?」
口角右上げ、腕組み動作。これはシエルが良からぬ事を考えている。それも、確実に。
「嫌。出たくない」
「何でだよ。出てこいって。出して~って懇願しろ」
「命令になってんじゃない。絶対嫌よ。絶対出ない」
「・・・その黒、切ってやる。と言ってもか?」
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