山崎絵夢

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力強く瞑った瞳からは涙が零れ、小太刀を持つ手はガタガタ震えてる。 「……うっ……くっ」 絶えようとするが、小さな口からは嗚咽を漏れる。 (今、今いなくなった方が幸せなんだ!) 嫌われる前に命を絶とうとするが、なかなか小太刀を動かす事が出来ない。一度は自殺しようとした絵夢。その時は何の迷いもなかったが、今は決心したにも関わらず躊躇している。 たった一人だけ。 たった一人の存在が、死を決心させ躊躇させている。 「ふぅ……」 絵夢は一旦、小太刀を喉元から離し一呼吸した。 (幸せなうちに逝こう) 再び心を決めると、小太刀を逆手に持ち刃を自分に向ける。 ゆっくりと引き寄せ、数センチの所で一旦止める。息を吸うと共に少し離し反動をつけた。肺いっぱいまで吸った空気を吐き出すと共に、勢い良く自分の喉元目掛けて小太刀を降ろす。 《パーーーン!!》 小太刀の切っ先が触れるか触れないかの所で、風船が割れたような音が部屋に響く渡る。 絵夢は左手の甲を右手で押さえ蹲り、持っていた小太刀は部屋の端まで飛ばされていた。
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