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「よう聞きや! わいが自分を嫌う事は死んでもありえん」
絵夢は山崎の顔を見上げる。そこには澄んだ瞳で口角を微かに上げている彼の顔があった。
「わいな。自分のおとんになるんやで? 何があろうと息子を嫌う親はおらん」
「……ふぇ?」
(山崎さんが親になる?)
突如言われた事に、目を皿のようにし口をポカーンと開けた。
「なんちゅう顔をしとるんや」
「だって……親って……どういう事なの?」
山崎は大阪での出来事を絵夢に説き聞かせた。
「ごめんなさい。僕のせいで……僕なんかを……子供なんて」
「何言うとるんや? 嫌やったら息子にする訳ないやろ? その前に借金すらしようとせんわ」
「ごめんなさい」
自分のせいで山崎に多大な迷惑を掛けたと思い、自己嫌悪に陥った。
「謝らなあかん所がちゃうで?」
「――え?」
「わいは自分の事で苦労なんてしたと思うておらん。やから、その事は謝らんでええ」
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