序章

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乱暴に扉を開け放つ音 今のでよく硝子が割れなかったものだと、一瞬だけ思いつつ扉の方へと視線をやる そこには、凛とした少女が一人、息を切らせこちらを見つめていた その瞳は綺麗な水色で 髪は艶やかな癖のない栗色 白色のカチューシャ 見覚えは、勿論だがない だがその少女は、空と目が合うなり人類が可能な限りの素早さでがらりと、歩み方を変える。 楚々たる足取りで少女は全くの迷いも躊躇いもなく、真っ直ぐに歩みを進めてきた。 一挙手一投足、手足はおろか髪の先にまで神経が届いたかのような挙措は、誰の目にも非の打ち所なく美しい。 だがしかし。 空は不運にも一瞬で理解してしまったのだ、完全無欠の少女が纏うどこか尋常じゃない気配に。冷たいようで熱いような、相反するようでそれでいて等しく不穏当な、そんな気配。 直訳してしまえば――― 彼女は今、静かに、何かに対してものすごい羞恥と怒りに震えている。敢えて数値化するならば、五段階評価で八か九くらいに。 無論、その対象は、 「その手にあるノートの、中身…見たのかしら?」 殺意にも似た気配に一瞬目を疑うが嘘を付いたとしても、無理矢理はかされ兼ねないし此以上自分をこのような妄想小説のネタにされるのも自分からしたら胸くそ悪い。 ここは思いっ切り、はっきりと言っておくべきだろう と…、意気込み少女に向かってノートを差し出し 「止めろ、俺をネタにこんなもの書くな」 そう告げる すると、こともあろうか 少女はノートをわし掴むと空を睨めつけ、そして――― 「表現の自由は方のもとで、自由とされているわ!!」
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