優しいお姫様

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「藤堂さん、おはようございます」 男性社員は全員、朝からまことに向かって、他の女性社員には見せない笑顔を向ける。 私は毎朝、それに呆れるように自分のデスクへ向かう。 「おはようございます」 まことの笑顔に敵うものはないが、私も笑顔で挨拶をする。 何事も、少し動きやすい、ゆとりが大切だ。 同期や同じ部署の人たちと、必要以上に仲良くするつもりはないが、仲が悪くては身動きが取れない。 まことを本気で狙う男がいないか、 まことを虐めようとする女がいないか、 常に情報を得れるように、ある程度の信頼関係を築いていく。 「川口ー!」 少し離れた机から、上司の声が聞こえる。 「部長もお前の事好きだな。いや、仕事が好きなだけか。」 すぐ隣の席から先輩の妬みが聞こえる。 今日も仕事は忙しくなりそうだ。
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