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「怜弥……?」
自分を呼ぶ声に、閉じていた目を開ける。
僕を呼ぶ声の主はクラスのムードメーカー、長谷川直希。
「怜弥!!」
「やあ。無事だったんだね」
「俺は無事だ!!それより怜弥、その足!!」
そう言って取り乱す長谷川の目線の先には僕の右足。
……敵の罠に掛かり血まみれになっている僕の右足だ。
「ああ、これ?大丈夫大丈夫」
「ちょっと動くなよ?」
長谷川はそう言うと右手で空中に魔法陣を描き始める。
「《ヒール》」
僕の右足に手をかざし彼がそう唱えるとみるみるうちに右足の傷が消えていった。
「もっとも、俺じゃ止血程度にしかならねえけどな」
「それでも僕よりは数段ましさ。ありがとう」
長谷川が使った右足の傷を治した魔法は回復魔法の中でも下位の魔法だ。
だけど、僕の足の傷は消え、止血には充分だ。
――いいなあ、魔法を使えて。
……いけない、こんな事を考えている余裕はない。
「さあ逃げようか。問題はここをどうやって切り抜けるかだ。僕と君。戦力はゼロに等しいけどね」
僕は苦笑しながら長谷川直希を見る。もちろん彼も苦笑している。
「俺達G組じゃそんなもんだ。ま、敵に見つからなければなんとかなるだろ」
苦笑したまま彼は言う。
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