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「どうしたの?」
真剣な表情で僕に話しかけてくる彼。
「別々に逃げよう、俺が囮になる」
「いや、でもそれは危ないよ。君が一人で逃げ切れるような人数じゃない。それに」
「じゃあ!!」
急に声を荒げる彼。
「じゃあ、怜弥が、お前が居たら逃げ切れんのか!?足を怪我してる、魔法も使えない足手纏いと落ちこぼれで!!」
――それは、確かに言う通りだ。僕が居た所で足手纏いにしかならない。
「……それに、指揮者(コンダクター)であるお前が死んだらクラス全員が死ぬ可能性があるんだぞ」
クラス全員が死ぬ。
その言葉が僕の中で何度も繰り返される。
「……わかった。逃げ切ってよ?」
「俺を誰だと思ってんだ?『長谷川家』の長男だぞ?」
そう言って笑う彼。
信じるしかないんだ。
「……任せたよ。死なないで、また会おう」
「おう」
――――
怜弥が足を引きずりながら去ったあと、一人残された少年は空を見上げ笑い、そして呟く。
「じゃあな、みんな……生きてくれ。」
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