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「っ…!!」
驚きのあまり声も出ない俺に、刀を抜こうとするが手が震えて動けない尾上の松。
何を隠そう、目の前には全身金属の龍が居るのだ。
それも、自分達の目の前に大きな頭をもたげて。
「お、お、おい…貴様、体を浮かして…なんとか出来ないのか…」
「…武器…ないからむりだって…」
声を絞り出すのすら精一杯。
重圧でその場から一歩も動けないし、飛び上がるのも無理だ。
「やっほぉ!お困りのようだねぇー!」
―いきなり、聞いたことも無い甲高い声が響いた。
どうやら女の人らしい。
龍はその声に気づき、うなり声を上げて頭を左の方へ向けなおした。
「こわぁーい…そんな工事現場みたいな音出しちゃやだぁ」
間の抜けるような受け答えをしている女性はよく見ると軽装かつ金髪の、見た目的には
ギャルと言ってもいいような感じだった。
その手には、黒い何かが握られている。
「せっかくだから、これでも食らったらどぉ?」
女性は龍の頭をかわして横に回りこみ、手に持っていた黒い何かを投射した。
それが当たった瞬間、龍の全身に激しい火花が走りだした。
すぐにこの場を離れないと危ない。
「逃げるぞ、尾上の松!」
「あ、ああ!」
尾上の松は刀を捨てて走り出し、俺は必死で飛び上がり、ひたすら空中をクロールで進みまくった。
そろそろ体力も限界、というところで俺はいつものようにふらふらと地面へ舞い降りた。
後ろを振りむくとそこには、地面にうつ伏せで倒れている尾上の松がいた。幸い、怪我は全く無いようだ。
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