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「では、次は泳ぎの練習だ!」
「ちょっと待て、何でそういう流れになってるんだ?」
「危機を回避するためには、己の力を最大限に発揮できるようにせねばならない。折角手に入れた力だ、存分に使わねば勿体無いだろう?」
尾上の松は、まるで体育教師のように刀を右肩に背負い、厳しくこちらを睨んできた。
「分かったよ…何この修行みたいな空気」
仕方ないので、先ほどのように勢いをつけて飛び上がり、空中に上がった瞬間にとりあえず犬掻きの動きをとった。
―どうやら、体は浮き続けているようだ。
「犬掻きは体力の消耗が激しい。やるならクロールだ!方向転換も身につけるぞ!」
後ろから尾上の松が吠え立てる。
やれやれ、とため息が出そうなのをこらえ、泳法をクロールに変えて左右に動いてみた。
「よし、いいぞ!貴様、実は泳ぐのも得意なのか?」
「人並みだと思うけど。ていうか、喋ってるとこの状態キープでき…ない…」
ふらりと力が抜け、俺は地面に落ちた。とは言ってもまるでゴムのように軽い衝撃が走っただけで、立ち上がるとまたすぐに、体がふわりと浮き上がった。
「どうやら、相当の集中力を要するようだな」
「ああ、戦闘中は会話厳禁な」
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