第一章

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 『妖精』の人生は森から始まり、森で終わる。  『妖精』は生涯、森の外には出ずにその一生を終える。  『妖精』は千年近く生きる種族だ。つまり、全ての『妖精』は、その千年間森の中から一歩も出ることなくその一生を終えていることになる。  ――千年間もずっと『森の中』で暮らしていくだなんて。それは、なんてつまらない、なんて退屈な生き様なんだろう。  正面でのたうつ大樹の根に、男はなんとなく視線を送っていた。  『妖精族』の青年である彼の名は、フレア=レッドフィールド。男にしてはやや長めの黒髪を風に揺らし、彼はただ立ち尽くしていた。
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