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学生寮で今年進級して二年となった少女は朝日の眩しさに目を覚ました
短く切り揃えた灰色の髪を手櫛で梳かしベッドの傍らに置かれた眼鏡を付け寝間着から制服へ着替える
朝食は一枚のトーストを用意し小さな背が少しでも伸びる様にとミルク
両手を合わせてトーストに噛り付く少女は今日の召喚に思いを馳せた
年端もいかぬ子どもの頃に覚醒した魔法の才、両親が必死に受講料を稼いでくれてどうにかこの魔法学院に通う事ができた
来てみて先ず驚いたのは貴族からの陰湿な虐め、全ての貴族と言うわけではないがそれでも大半は平民に差別的な様である
一年の月日は長くその間は必死で勉学に励み同学年の誰よりも魔法は上手く扱えるがその努力は貴族教師にだけは意味がなく、毎回適当な成績を付けられていた
だが今日は違う、今日の召喚で凄いものを召喚すればその考えも覆るに違いない
ドラゴン種や巨人種の様な力のある召喚獣、聖霊種や亜人種の様な知性のある召喚獣これらがでれば教師も認めて貰える筈
仮にスライム種や魔獣種の様な見慣れたものを召喚しようもなら鼻で笑われてこの先更に風当たりが悪くなるだろう
「………時間」
大きな杖を持って片手には本を持つ少女は自室を後にする
向かう先は学院内の広大な地、何も無い故に危険性は特に無い場所
二年生は皆そこに集まる
「セラおはよう!」
「………おはよう」
少女セラフィス・アズケインの愛称を呼ぶのは数少ない友人と言える存在
ウェーブする黒髪を垂らして少女に笑顔を向ける女性クラエナ・ニニバルコ
素っ気ない声で返されるのにも今はもう馴れた様でたいして気にせず少女の隣に立ち朝から高いテンションで話し掛ける
そんな女性の言葉に本を読みながら時折相槌を打っていると漸く担当教師の到着だ
エドワルド・フラビレック
この教師は平民の出であり差別的に生徒を見ない先生、これは稀な存在だろう
そして教師と言うことで貴族から何かを言われる事も無い
「それでは召喚の儀を始めてもらうよ、昨晩に教えた通り自分の詠唱でパートナーを強く願うんだ、そうしたら絶対に君達の声に応えてくれる」
「でも先生?そこにちゃんと魔法も使えない子がいるのに絶対なんて言い切れるんですか?」
先生の説明の後少女の隣で女性が可笑しそうに其処に指を差す
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