歩行者用交通信号機。

4/8
前へ
/24ページ
次へ
そういえば、僕が彼と出会ったのも、信号待ちの時だった。 夜の赤信号の明かりがマチを赤く照らしていて、僕は相変わらず有効的な時間の使い方を思い付けずに、“とかげのしっぽが死ぬのはいつか”を考えていた時だった。 「何してるの?」 僕は見知らぬ人に急に話しかけられて警戒したが、正直に答えた。 「何って、信号待ち。」 とかげのしっぽについて考えていた、なんて言わなくてもいいだろう。 「ふーん。別に、渡っちゃえばいいのに。」 そう言って彼は赤信号にもかかわらず、道路を横切る。 彼は、“車がいなければ赤信号は無視して構わない主義”の人だった。 そして僕の予想通り、(これは後で分かることだが)彼は生まれながらの都会人だった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加