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「――どうしたものか……」
小説を書くことが出来ずに嘆息した私の目の前に、一人の少女が現れた。
「簡単なことです。自由にしておやりなさいな」
何を? そう訊く前に、彼女は私が持っていた書きかけの原稿を手に取り、ある頁を開いた。そっと息を吹きかける。退屈を持て余した物語が風に舞った。私の手を離れ、意味を持たぬ羅列となる。
「楽しそうですね」
少女が皮肉そうに微笑った。
《もう逢うことはないでせう》
文字は置き手紙のように哀しく決別を告げていた。
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