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《こういうこと、ない? 目が覚めると、酷く重要に思えていた夢を忘れていた、なんてことは。――もしかしたら僕達は、無意識に事実を忘れ去ろうとしているんじゃないか? なんて、思うことがあるんだ》
「忘れ去る?」
《無論、僕も人のことを言えた義理じゃない。逃避しているのかもしれない。けれど、ふと思い出すんだ。夢のという名の永遠に生きる記憶を》
「永遠の、記憶――」
《色褪せないし、朽ちることもない。それは幸せな場所かもしれないし、そうでないかもしれない。それは時に残酷で鮮やかな……》
「……罰だ――」
俺は、その原風景を知っているような気がした。
《思い出したかい? 君が犯した罪を》
血に汚れた手。赤く、鈍く光るナイフ。少年――
「……お前、は……」
名前が思い出せない。声が出なかった。苦しい。
《僕を、殺さないで》
彼の頬を伝い落ちる涙は、俺の意識を連れ去った。狂気に堕ちる――。悲鳴が、部屋の中で哀しく響いた。
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