朱い日本─黒い東京・続章─

帰ってきた女

東京都知事殺害事件はこの国に数多くの悲しい疵痕と後悔をもたらし、人々は改めて長年の間気付けなかった過ちを悔やみ、嘆いた。それと同時に日本を仕切っていた政権が実は日本を地図から消そうとした売国奴だったという事実に愕然とし、期待していたのに裏切られたという悔しさもにじむ事件ともなった。
そして皮肉にもそれが、これまで政権の操り人形状態だったマスコミが一斉に政権のタブーを暴露し始めたのである。それは芸能界にも及び、政治家と関係があった大物タレントや歌手、俳優らが次々と警察によって強制捜査され、遂には逮捕、あるいは芸能界永久追放となった。
無論、影響は長年続いていたブームにも及んだ。来日していた海外スターは殆どが反日だと分かり即座に来日を却下、出入り禁止にした。さらには連日放送していた海外ドラマは何時しか数が減り、変わりに時代劇の再放送や日本の短編ドラマが流れ始めた。さらには海外スターのCMも少なくなり、何時しか見かけることが無くなった。
正しくそれは長年日本を牛耳っていた偽りのブームの終焉と言えるようだった。

最早、誰しもが皆騙されていた事に気付いた。しかし、気付いたときには変わり果てた東京の姿があった。彼等はその日から強烈な劣等感が襲いかかり、人々の心の中にこびり付いたのである。