史上最悪のBirthday

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あたしが困惑した顔で、女性とケーキを交互に見ていると、「とりあえず火を消して。」と父が囁く。 ソファーに腰掛けると、あたしは言われるまま息を吹き、火を消した。 マッチを消した様な、ロウソクの消えたにおいが辺りに漂う。 室内の電気がつけられ、二人が拍手してあたしを見つめていた。 「誰、この人?」 和やかな空気を打ち消すように、あたしは冷ややかな声で言った。 「この方は水城美砂子(ミズキミサコ)さん。父さんの勤める病院の看護士さんで、お前の母親になってくれる人だ。」 「よろしくね、恋ちゃん。」 「……再婚するって事?」 父に紹介されてあたしに微笑みかけてきた女性には構わず、父に訊き返した。 「ああ。」 あたしが反対するなんてちっとも考えていないような笑顔で答える父。 「なんであたしに相談もなく決めるのよ?」 冷やかな視線を女性に向けると、二人の表情が少し陰った。 「だからこうやって紹介しようと連れてきたんだ。」 「………。」 あたしが黙った事で、少しの沈黙がリビングに流れる。
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