羽球

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─────◇◆◇◆◇───── 車内は静かだった。 車を打つ土砂降りの雨音とワイパーがフロントガラスを拭う音しか聞こえない。 緊張で上手く会話ができない。 参ったな……俺ってこんなに会話苦手だったか? さっきから、何回か話し掛けようとはしてるんだが……、話し掛けることができない。 そうこうしている内に、彼女の指定した場所に着いてしまった。 彼女がドアを開けようと、手を掛ける。 咄嗟に、声が出た。 「なあ、俺さ後輩達に総体見に行くって約束してんだけど、お前一緒に行かねぇか?」 俺の誘いを聞いた彼女は、いきなり笑い出した。 「たったそれだけのことなのに、時間掛け過ぎ」 「……笑うなよ」 メチャクチャ恥ずかしい。 今すぐにでもアクセルを踏み込んでこの場から逃げ去りたい。 「良いじゃん、嬉しいんだから。 高校総体、一緒に見に行こ?」 そう言って、彼女は出ていった。 後に残されたのは、呆けた顔をした俺と、小さく折り畳まれたメモ。 …………家に帰ってから、彼女が座っていた助手席の座面にハァハァしながら頬擦りしたのは内緒だ。
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