夏とじいちゃん

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「タケオ、頼む。お前以外に頼めるやつもいなくてさ」 アキラが久しぶりに僕をコーヒーショップに呼び出したかと思ったら、こういう頼みだったか。 目の前には『連帯保証人』と書かれた書類が差し出されていた。 絶対になるなと世の中では言われている連帯保証人。 もしアキラが借りた借金をもし払えないって逃げだしたら、僕が責任を持って代わりに返済しなくてはならない。 「どうしてもこの金が必要なんだ。そうじゃないと、うちの会社、倒産しちまうんだ」 頭を机にこすりつけて僕に頼んでいたかと思うと、それでも僕がうんと返事しないから、アキラは床に正座して、姿勢よく土下座した。 「頼む! この通りだ」 アキラとは小学校からずっと一緒で大学も同じ学部に通っていた。 卒業後も年に1、2回は飲んでいたけど、それも5年前のこと。 全然連絡してこないと思ったら、いつの間にか自分の会社を立ち上げていたとは……。 そういうわけで、こいつはどういうやつか、十分に理解している。 金にルーズなわけでも、友を裏切るようなやつじゃないことを。 そして、そんな腐れ縁ともなっているやつが、ここまで頼み込むならば。 「わかったよ」 「ほ、ほんとうかタケオ!!」 アキラは飛び上がって僕の両手をつかみ、涙を浮かべた。 僕は、潔く印を押した。 ――のが、間違いだった。 金と友情は別物だ。 数ヵ月後、僕の元へ督促状が送られてきた。 アキラのケータイに連絡を入れても、既に解約されていて繋がらなかった。 僕は仕方なく、彼の代わりに返済した。 利子を含めて、500万。 社会人になってコツコツ貯めてきたお金だ。 悪いことというのは、タイミング良く重なるもので、僕の勤めていた会社も事業不振による事業所の閉鎖。 それに伴う人員削減。 僕は、その対象となって、会社を辞めさせられた。
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