不可思議な一致

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「ただ、不可解なことが何点かありまして……」 坊西は一通りの状況説明を終え、元々細い目を更に細めて怪訝な表情で切り出した。 「まず一点は被害者からもこの部屋からも犯人と争った形跡が無いこと。二点目は余りにも犯行が完璧すぎること。これ程の猟奇殺人をしておいて、髪の毛一つ残さない完全な証拠の隠滅。残虐性と計画性は普通、同時に成立しえない筈なのに。そして三点目、これが最後ですが……」 「分かってる」 現場に入ってからは頑なに口を開けなかった小山田警部補が初めて言葉を発した。 「坊西さん、あんたが言いたいのは、つまり……〝似ている〟ってことだろ?」 坊西は黙って首を縦に振った。一方、河野刑事は訳が分からないといった表情で二人の顔を見比べていた。 「信平、お前『赤い狂気』は読んでいないと言ってたよな?」 「ええ。でも事件と何の関係もないでしょう?」 「大有りだよ」 小山田警部補は気持ちの整理をつけて言った。 「似ている。似すぎているんだ……。『赤い狂気』で描かれた殺人事件と今回のこの事件の状況がな……!」
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