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雨の日
―――まただ。
家までのいつもの帰り道、足を止めた。
傘を少しだけ斜めにする。
視線の先には、灰色のコンクリを荒く固めた外壁のアパート一階にあるベランダ。
ベランダの柵は、地面とほぼ同じ位置から始まっていて、私の身長ほどの高さまで。
雨ざらしになった洗濯物が風に揺られている。
真っ黒のカーテンに仕切られた部屋の中に、今誰か中にいるかどうかなんて分からなかったけれど、これだけ雨が降っても洗濯物に気付かないなんて留守に決まっている。
今日は、朝から確実に降りそうな空模様だった。
せっかく干すのにこれじゃ、むしろ干さない方がマシよね。
運の悪い人。
洗濯物はほとんどがモノクロで。
靴下は黒、Yシャツは白。
それらはサラリーマン男性の一人暮らしを想像させた。
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