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辺りが薄暗くなり家に
戻ろうとした時…
林の奥から
獣の唸り声が聞こえてきた。
それに気付いた婆は
とっさに叫んだ。
「鬼春!!早く逃げなさい!!」
私は…
逃げれなかった…
婆を守らなきゃと思った。
そのまま意識を失い
気付いたら布団の中だった。
隣の部屋からは
爺と婆の話声が聞こえてきた。
立ち上がり、
戸に手をかけようとした時…
!?
…私は耳を疑った。
「とにかくあの子は
人の子じゃないんだよ!!
鬼の子だよ!!」
!?…鬼…!?
「そんな事を言ったって
わしは見とらんし
第一あの子に
なんて言うつもりじゃ!?
お前は鬼の子かもしらん
出て行けとでも言うのか!?
あの子には捨て子だったと
話したばかりじゃぞ!
ただでさえ悲しかったろうに
更に悲しみを増やすつもりか!?
事実、お前はあの子に
助けられたじゃろうが!!
ならばわしらを襲ったりは
せんじゃろうに!」
「ならあんたもあの子と
森へ入ってごらんよ!!
あの子は少なくとも正気を
失ってたよ!!だとすれば
私らを襲わないなんて
言い切れないだろ!?」
………。
私は頭が真っ白になり
その場に座り込んでしまった。
その直後、勢い良く戸が開き
婆が口を開けた。
「なんだい、聞いてたのか。
お前、さっきの事
覚えてるかい?」
私は言葉を出せず首を振った。
「お前、話聞いてたんだろ?
答えな!
自分の事知ってたのかい?!」
そう言いながら婆は
座り込んだままの
私の胸ぐらを掴み
問い詰めようとした。
「婆さん!やめんか!!
この子に聞いて
わかるわけないだろう!!
ずっとわしらと
暮らしてたんじゃ!!
鬼春。こっちへおいで。
話をしよう。」
爺はそう言いながら
私を立ち上がらせ
囲炉裏の前に座らせた。
その光景を見ていた婆が
「ふんっ。こうなったら
可愛いだなんて
思えやしない。」
と、小さく言ったのが聞こえ
私は胸が痛くなった。
最早、私の知ってる
優しい婆は
何処にも居なかった…
爺も優しくしてはいたが
顔に戸惑いの心情が
表れていた。
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