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あれから十年…
『ラブリー・エンジェル』にスーツを着たサルタナに腕を組んで歩くワンピース姿のサルタナの姉が入った。
「あら、いらっしゃい。十年ぶりじゃないお二人さん。」
カウンターの向こうで店長のノブ子が二人を迎えた。
ノブ子の後ろには世里がいたが、あいつの姿はない。
「まだ進道は帰っていないのか…」
イーゴリとの闘いで勝利した進道は、イーゴリが統べていたロシアマフィア全体を崩壊させるためロシアへ。
俺は姉と共に日本にとどまった。
ノブ子さんの援助で高校の教師となった。
「『あと少しで来る』って連絡はあったのよ。」
世里が嬉しそうに言う。
「ん?」
世里の後ろに子供が二人隠れているのがわかった。
―・・・・・知らなかった…まぁ、いいか。
この風景を見て今思うと、あの日の出来事は嘘だったのではないかと思えてしまう。
俺も進道も命が尽きる手前まで戦った。
限界を越えてまで戦った。
その代償に、目的を達せられた俺達は色々なものを失った。
俺は故郷と殺し屋として築いた地位を…
進道は永遠の安全を…
恐らく、あの日が俺達の人生のピークであり分岐点だった。
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