No.09 酒場で

2/4
前へ
/103ページ
次へ
あれから十年… 『ラブリー・エンジェル』にスーツを着たサルタナに腕を組んで歩くワンピース姿のサルタナの姉が入った。 「あら、いらっしゃい。十年ぶりじゃないお二人さん。」 カウンターの向こうで店長のノブ子が二人を迎えた。 ノブ子の後ろには世里がいたが、あいつの姿はない。 「まだ進道は帰っていないのか…」 イーゴリとの闘いで勝利した進道は、イーゴリが統べていたロシアマフィア全体を崩壊させるためロシアへ。 俺は姉と共に日本にとどまった。 ノブ子さんの援助で高校の教師となった。 「『あと少しで来る』って連絡はあったのよ。」 世里が嬉しそうに言う。 「ん?」 世里の後ろに子供が二人隠れているのがわかった。 ―・・・・・知らなかった…まぁ、いいか。 この風景を見て今思うと、あの日の出来事は嘘だったのではないかと思えてしまう。 俺も進道も命が尽きる手前まで戦った。 限界を越えてまで戦った。 その代償に、目的を達せられた俺達は色々なものを失った。 俺は故郷と殺し屋として築いた地位を… 進道は永遠の安全を… 恐らく、あの日が俺達の人生のピークであり分岐点だった。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加