9人が本棚に入れています
本棚に追加
「今年の柱は小夜に決まりました。覚悟は宜しいですか」
蝋燭の頼り無い光が、辺りを仄かに照らしている。六角の中心で二人の祭司が向かい合い、話していた。
一人は、今発言した狐顔の青年。もう一人は巌の様に無骨な顔をした、壮年の男だった。
「良いも悪いも、託宣で決まったことだ。贄を捧げねば、災禍が村を襲う」
壮年の祭司が苦虫を噛み潰したような顔で言う。
「しかし、小夜は貴方の娘……」
「言うな。巫覡(ふげき)の一族が託宣に従わねば、柱となった多くの者に示しがつかぬ」
壮年の祭司はギリリと音がする程奥歯を噛み締め、血を吐く様な苦悶の表情で答えた。
「分かりました。柱の儀は明日の夕刻に執り行います。それまではゆるりとお過ごし下さい」
最初のコメントを投稿しよう!