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「今年の柱は小夜に決まりました。覚悟は宜しいですか」  蝋燭の頼り無い光が、辺りを仄かに照らしている。六角の中心で二人の祭司が向かい合い、話していた。  一人は、今発言した狐顔の青年。もう一人は巌の様に無骨な顔をした、壮年の男だった。 「良いも悪いも、託宣で決まったことだ。贄を捧げねば、災禍が村を襲う」  壮年の祭司が苦虫を噛み潰したような顔で言う。 「しかし、小夜は貴方の娘……」 「言うな。巫覡(ふげき)の一族が託宣に従わねば、柱となった多くの者に示しがつかぬ」  壮年の祭司はギリリと音がする程奥歯を噛み締め、血を吐く様な苦悶の表情で答えた。 「分かりました。柱の儀は明日の夕刻に執り行います。それまではゆるりとお過ごし下さい」
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