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幾度も自問自答したが答えは出ない。
それにしても、人影が全く見当たらないのはどお云う事だ。
いくら見回しても周りにあるのは、山へと続く野道と田畑、後は杉やら何やらが雑多に生えているだけだ。
何があったんだ一体?
りぃん……
何処からか幽かに鈴の音が聴こえた。
それに混じり、笛の音、鼓の音が聴こえる。
何処かで祭りでもやっているのだろうか。
野道の奥――人の手があまり入っていないであろう、薄暗い雑木林から音は響いていた。
行ってみよう。今は動くしかない。
何も分からないのだから。
私が措かれた状況が少しでも分かる様にと祈る。
音に導かれる様にして、緑の天蓋の下を歩いた。どれ程歩いた時だろうか、唐突に視界は拓け、頂上に続く階段と、深紅の鳥居が現れた。
それは木々の間に隠れる様にひっそりと、慎ましやかに建てられていた。
階段を上り、二匹の狛犬が護る境内に入る。
空気が変わった気がした。
凛とした、張り詰めた空気に思わず姿勢を正す。
敷き詰められた玉砂利は、雪の様に真っ白で、清烈な輝きを放っていた。
木々は境内を包み隠す様に取り囲んでいる。
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