水の杜

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 湖底に近付くにつれ舞い踊る光は色味を失い、淡く消え、静寂と深い蒼とが湖底に降り積もる。  目の前には紺碧に彩られた階段と、それに続く石造りのごく短い道。  周囲の高い木々は海草の様にゆらゆらと枝葉を揺らしている。  その光景を私は底から眺めていた。  私の周りを包む物は空気ではなく、恐ろしく透明度の高い水分だった。  けれど、浮力を感じない。有るべき水の抵抗も、まるでなかった。  蒼く染まる風景以外は、何もかもが地上に居るのと変わらなかった。  息が出来るのではないかと、恐る恐る吸ってみる。  確かに水を吸った筈なのに感触はない。  思い切って今度は大きく吸ってみた。  水ではなく、空気が肺に充ちるのを感じた。  呼吸が出来る。  何なんだ此処は、全てがあべこべだ。  考えなしに入ってしまったのは失敗だったか。  今更ながらに思う。  私の常識からはあまりに逸脱している。  状況の推移が追い付かず、混乱するばかりだった。
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