9人が本棚に入れています
本棚に追加
舞うことが全て、舞うことで救われると言っている様だった。
その姿は神々しくさえあった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。許しておくれ」
一心不乱に舞い続ける少女を目の端とらえては女が言う。
「ごめんなさい。ごめんなさい。許しておくれ」
舞いも佳境に入ろうとする中、女は固く目を閉じ、ひたすらに詫びを入れ続けていた。
音高く鈴の音が響き、舞いは終演を告げる。
しかし、喝采どころか声を上げる者すら居なかった。
少女は不思議そうに人々を見下ろし「何故、泣いているのですか、母さま」と詫び続けていた女に訊く。
しかし、舞台袖から成り行きを見守っていた祭司が少女に歩み寄り、六角の社殿へ連れて行ってしまった。
女の答えを紡ごうと開きかけた口は「あぁ」と感情発声をするにとどまる。
最初のコメントを投稿しよう!