水の杜

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 舞うことが全て、舞うことで救われると言っている様だった。  その姿は神々しくさえあった。 「ごめんなさい。ごめんなさい。許しておくれ」  一心不乱に舞い続ける少女を目の端とらえては女が言う。 「ごめんなさい。ごめんなさい。許しておくれ」  舞いも佳境に入ろうとする中、女は固く目を閉じ、ひたすらに詫びを入れ続けていた。  音高く鈴の音が響き、舞いは終演を告げる。  しかし、喝采どころか声を上げる者すら居なかった。  少女は不思議そうに人々を見下ろし「何故、泣いているのですか、母さま」と詫び続けていた女に訊く。  しかし、舞台袖から成り行きを見守っていた祭司が少女に歩み寄り、六角の社殿へ連れて行ってしまった。  女の答えを紡ごうと開きかけた口は「あぁ」と感情発声をするにとどまる。
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