知らない場所

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この現象は聞いた事がある。誰に聞いたかは覚えてないけど。 確か足を滑らせて倒れる時スローモーションで見えたりするというものだ。 こういう状態になると何も出来ず、ただゆっくりと倒れるだけらしい。 今の俺の状態もこれだろう。 槍先はすぐそこまできている。 後はゆっくりと自分の腹に突き刺さる所を見るだけだ。 俺の最後って最悪だな。 記憶が無いまま知らない男に腹を刺されて終わりだなんて。 俺は目を閉じて人生を諦めた。その時だった。 《避けろ》 耳から聞こえたというより、頭に直接入ってきたような不思議な感覚。 俺は驚いて目を開けた。でも周りの光景はさっきと変わらない。 唯一変わっているのは槍先の位置ぐらいだ。 もうすでに腹の皮一枚を突き破っている。じっとしていれば更に突き進んでくるだろう。 だが、そうはならなかった。俺は槍を避ける事に成功したのだ。 これもまた不思議な事に、ゆっくりと進む時間の中で自分だけがいつもの様に動けたのだ。 そのおかげで かすり傷はついたものの避ける事に成功したのだが。 訳が分からない現象に俺は固まった。 でも、そんな暇は無いようだ。
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