0人が本棚に入れています
本棚に追加
この現象は聞いた事がある。誰に聞いたかは覚えてないけど。
確か足を滑らせて倒れる時スローモーションで見えたりするというものだ。
こういう状態になると何も出来ず、ただゆっくりと倒れるだけらしい。
今の俺の状態もこれだろう。
槍先はすぐそこまできている。
後はゆっくりと自分の腹に突き刺さる所を見るだけだ。
俺の最後って最悪だな。
記憶が無いまま知らない男に腹を刺されて終わりだなんて。
俺は目を閉じて人生を諦めた。その時だった。
《避けろ》
耳から聞こえたというより、頭に直接入ってきたような不思議な感覚。
俺は驚いて目を開けた。でも周りの光景はさっきと変わらない。
唯一変わっているのは槍先の位置ぐらいだ。
もうすでに腹の皮一枚を突き破っている。じっとしていれば更に突き進んでくるだろう。
だが、そうはならなかった。俺は槍を避ける事に成功したのだ。
これもまた不思議な事に、ゆっくりと進む時間の中で自分だけがいつもの様に動けたのだ。
そのおかげで
かすり傷はついたものの避ける事に成功したのだが。
訳が分からない現象に俺は固まった。
でも、そんな暇は無いようだ。
最初のコメントを投稿しよう!