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ある日、いじめグループのリーダー澤田加奈子が、手下三人を引き連れ私の机の前にやって来た。
お弁当を広げ食べはじめたばかりの私は、気付かない振りに徹した。
『面倒臭い…お昼くらいゆっくり食べさせてっ』
そう心の中で呟きながら。
その光景に気付いた同じクラスの人達が、コソコソと何やら話しながらこちらを見ている。
教室内に軽い緊張感が広がった。
「ちょっと…顔貸してくんない」
鼻にかかった、聞き取り難い滑舌。
私は何も言わず、黙々と携帯を見ながらお弁当を口に運び続けた。
「ちょっと…聞いてんのっ」
加奈子はムッとした様に声を荒げる。
それでも只ひたすらお弁当を口に運び続ける私。
この先どうなるか、だいたい想像がつくからだ。
そんな状況に、「はい承知しました」と、素直に入り込む様な私じゃない。
この半年こんな状況になった事は何度もあるが、その度に、私は完全無視をしてきた。
なのに、再びのこの状況。
『この人達、学習能力が無いのかしら?』
私は可笑しくなって…つい…つい笑ってしまった。
「クスッ」
一瞬で静まり変える教室。
だが、その数秒後
「チッ………」
加奈子の舌打ちの音が広がると同時に、静かな教室にピンと緊張感が広がる。
身体中に突き刺さる視線。
そして、次の瞬間
「ガシャン!……カラカランッ」
プラスチック容器の転がる音と同時に、私の前からお弁当が消えた。
そう、加奈子は私のお弁当を、机の上から払い落としたのだ。
憎たらしい静寂と緊張感が教室に広がる。
誰一人として、この加奈子のこの行動に口を出す者は居なかった。
いつもの事だ。
自分さえ良ければ良い…面倒な事には関わらない、そんなクラスメートばかり。
落とされたお弁当箱に視線を落とすと、中身が悲しく転がっている光景が目に入る
まだ半分も食べてはいないままこんな姿になった弁当。
和子さんが朝早く起きて、バランスを考えながら詰めてくれたお弁当。
怒りが身体の芯から沸き上がり、手がブルブルと振るえるのを感じた。
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