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いつまで続くのだろうか…こんな馬鹿げた事、悔しさと惨めさで目眩がする。
感情を抑える為ぎゅっと握り締めていた手の平に爪が食い込み、痛みで我に帰ると、手の平にぬるっとした感触と激しい痛みが広がった。
おそらく、爪が食い込み出血しているのだろう。
『負けて…たまるか』
私は、その痛みに絶えながら…もう一度掌を強く握る。
そんな私の姿を見て、加奈子は言った。
「あららぁ教室汚しちゃ駄目じゃなぁん。そ・う・じ…してくださぁい」
その言葉を合図に、手下の三人が声を上げて笑い始める。
笑ってる…笑ってるのだ。
教室中に響き渡る程の大声で、私の事を笑っている。
そして次の瞬間、加奈子は私の髪をわし掴みにし、思い切り散らばったお弁当箱の方向に投げ倒した。
ガタンと激しく倒れる椅子、あまりの勢いに抵抗出来ず私は勢いよく投げ倒された。
倒れ込んだ先は、散らばったお弁当の中。
髪を掴まれた時の痛みと感覚が、ジンジンと心に流れ込んできた。
ヌルっとした感触と共に、甘酸っぱいチリソースの香りが鼻に入り、そこに和子さんお得意のエビチリがある事が直ぐに解る。
『和子さんのエビチリ、美味しいのにな…食べれなくなっちゃった』
そんな言葉が頭を過り、悲しみが心を支配しそうになる。
でも、ここで涙は見せたくない…絶対に。
私はゆっくりと立ち上がり、黙って椅子を元に戻した。
そして鞄からハンカチを取りだし、手に付いたソースを拭き取る。
ただただ黙って…何も言わずに。
壊れそうな心
弾けて飛び出しそうな心。
制服を見ると、白いご飯つぶとエビチリの赤いソースがべっとりと付いている画像が目に飛び込んでくる。
拭いても拭いても落ちない汚れ。
それでも私は、拭き続けた。
ギュッと唇を噛み締めながら。
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