5/50
前へ
/69ページ
次へ
その時だ、私の中で何かがうごめき始めた。 凄く不気味な…何か。 しかし、その時の私にはそれが何なのかどうでも良い状態だった。 気にする余裕など、全く無かったのだ。 『悔しい。憎い…私の前から消えてよ。居なくなってよ』 制服に付いたご飯つぶを取りながら、心の中で何度も呟く。 『皆んな大嫌い。憎い…憎い憎い憎い!』 笑い飽きた加奈子達、勢いが付いたのか今までよりも大きな声と強い力で、私の中のそれに、トドメをさした。 「まだ綺麗になってないじゃ~ん。拭きなよ~ほら~」 そう言い、やっと立ち上がった私の身体を四人で押さえ付け…再びご飯つぶの中へと押し倒し、落ちたご飯に擦りつけようとする。 「ほら~ほら~こうやって掃除したら早いんだよっ」 私は、必死に抵抗した。 手を払いのけ頭を振り足をバタつかせて。 でも、勢いづいた四人の力には、とうてい敵わなかった。 敵わない四つの力と必死に戦う私。 床にこすりつけられている頬が、激しく痛む。 静かな教室に、いちだんと高い四人の笑い声が響き渡った。 その時だ。 私の中の黒いモヤが急激に膨らんで行き、私の感情を全て飲み込み始めたのだ。 惨めさ、悔しさや…悲しみ、そして憎しみ…その全ての感情を、物凄いスピードで飲み込んでいく。 その表現が正しいのかどうかは解らないが、私にはそう感じたのだ。 そのモヤが膨らむ度に、私の気持ちが軽くなっていく。 どんどん膨らむ黒いモヤ、どんどん軽くなる私の心。 そして…次の瞬間、私は、意識を無くした。 何の感情も無い、真っ白な世界に落ちて行ったのだ。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加