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到着したトイレ…着いた途端、身体中の水分と言う水分が一気に流れ出た。
しばらく座ったまま落ち着くのを待ち、トイレを出ようと立ち上がった時だ。
廊下から、数人の女子の話し声が聞こえて来るのだ。
人数は判らないが、トイレに入って来たのは確かだ…隣のトイレのドアが開けられる音がする。
私は、思わず動きを止め息を殺した。
別に隠れる必要は無いのだろうが、嘔吐しながら流した涙の跡を見られたくなかったのだ。
私は、そのまま彼女達がトイレから出て行くのを待つ事にした。
聞くつもりなど全く無いのに耳に入ってくる会話。
彼氏とのデート中、メールが沢山来ていたとか、浮気がどうとか…どうでも良い内容だ。
おそらく、鏡の前でお化粧直しでもしながら話しているのだろう。
二人の女子の声が交互に聞こえるから三人…ノックされたらどうしよぅ…
そんな事を考えながら、私は時が過ぎるのを待った。
すると…
「でもさぁ、あれ酷かったよねぇ~」
「あれって?」
「菜子よ…菜子」
その瞬間、
身体中の感覚が一気に耳に集中した。
私の名前…
私の事を話し始めるの?
酷かった?何が?
私は、未だに襲ってくる吐き気に顔をしかめながら
、話しに聞き入った。
「あ昼休みの…あれね、うんうん、加奈子も酷いけど、あの菜子の反応は無いよね~」
もう一人の子も同じクラスなのだろうが、全く声に覚えが無い。
「菜子…何の反撃もしないからさ…途中から私怖くなったよ。普通さぁ、止めてとか何とか言うじゃん?」
「だよね…普通はね。菜子普通じゃ無いって事なんじゃない?キモいよ…怖いってよりキモい…私」
「キモいって…千夏ひどっ…キャハハハ」
千夏…千夏って…同じクラスの片岡千夏?って事は、一緒に居るのは山口里実だ…そうだこの声、この独特なイントネーション…間違い無い。
片岡千夏、山口里実…って事は…今トイレに入っているのは岡部美智…いつも一緒に居る三人だろう。
二人の笑い声がトイレに響き渡り、私の心に深く突き刺さった。
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