34人が本棚に入れています
本棚に追加
「輝くんっ、見て!」
背の低い色白の華奢な女の子が、僕の数歩前を小走りに進み、指をさす。
桜の花びらがひらひらと舞い、視界を薄いピンク色で染めた。
「すごいっ、すごいねっ」
彼女は振り返り、舞い踊る桜の花びらと僕とを交互に見ながら、顔に満面の笑みを浮かべる。
「遙ちゃん、そんなに走るとまた転ぶよ」
僕は言い、喜ぶ彼女の後姿を見守るようにみつめる。
――いつからだろう。
いつから僕は、彼女のことをこんな風に想うようになったのだろう。
そんなことを考えながら、彼女のちいさい背中を僕はみつめている。
最初のコメントを投稿しよう!