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遙とはじめて逢ったのがいつだったのか、はっきりとは憶えていない。
遙は僕の姉が十七歳のときに産んだ子だったから、正確にいえば出逢ったのは遙が赤ん坊のころで僕は九歳だったかもしれない。
なにしろ僕も幼くて、そんなことは勿論、記憶にない。
僕と姉の両親は、早くに亡くなっていた。
両親は二人ともあの頃には珍しいほどに晩婚で、母は姉のことを三七歳で産み、僕のことを四十五歳で産んだ。
僕も姉も、十分すぎるくらいに両親から愛情を注がれて育ったから
――だから、と言うわけではないけれど――
両親が早くに亡くった時も、その後も、哀しみこそ感じはすれ、淋しいと感じたことも、思ったことも、一度だってなかった。
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