―Ⅰ―

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母が病気で亡くなってから、わずか三年で後を追うようにして息をひきとった父の通夜で、久しぶりに遙に逢ったとき、僕は驚愕した。 ほとんど、鳥肌がたった、と言ってもいい。 たった十二歳のちいさな色の白い女の子に、そのとき、僕はまぎれもなく、欲情したのだから。 “欲情” 今思い出しても、自分で自分を殴りたくなる瞬間だ。 十二歳の女の子に、欲情しただなんて。 遙とは九歳差だから、そのとき僕は二十一歳だった。 言っておくが、勿論ロリコンではないし、ましてやそんな趣味など微塵もないし、童貞でもなかった。 にも関わらず、僕はあのとき、遙に欲情した。 身震いがするほどに。 鳥肌がたつほどに。
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