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春風が舞って、遙の色素の薄い茶色い髪が乱れる。
その瞬間、しろくほそい首が露わになり、僕の心臓はドクンと強く脈を打つ。
遙は乱れた髪を撫でつけるように押さえ耳にかけると、花びらへ向けていた視線を僕へとうつし、そして、みつめた。
「輝くん、どの辺にする?」
ドキドキとうるさい心臓を無視できず、僕は固まる。
「輝くん?」
どうしたの?
というように遙は僕をみつめ、顔をわずかに傾ける。
馬鹿みたいだ・・。
僕は思う。
九歳も年下の女の子に二十三にもなる大の男がこんなにもドキマギするなんて。
「あの辺りにしようか」
僕は遙から必死の思いで視線を逸らし、弁当を食べる場所を指さす。
今日は車で少し遠出をして花見に来ていた。
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