―Ⅰ―

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お弁当を作って花見にでも行こうか、と僕が言うと、遙は顔を輝かせて喜んだ。 『本当?!』 『僕が遙ちゃんに嘘ついたことある?』 『ない!』 遙はそう言うと、僕に抱きついて 『輝くん、大好きっ』 と言った。 遙の細い腰に手すらまわせないまま、他意のないその抱擁を木偶の坊のように僕はやり過ごす。 「今日、晴れてよかったね」 ビニールシートの反対側をバサバサとしながら、遙が言った。 「お花見はじめてなんだっ」 「学校で行ったりしなかったの?」 敷き終わったシートの四隅に、転がっていた石を置きながら僕は訊く。 「しないよー」 遙が笑いながらこたえる。 「あ、でも、もうそろそろ修学旅行があるよ」 「そっか。 もう中学三年生だもんな」
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