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お弁当を作って花見にでも行こうか、と僕が言うと、遙は顔を輝かせて喜んだ。
『本当?!』
『僕が遙ちゃんに嘘ついたことある?』
『ない!』
遙はそう言うと、僕に抱きついて
『輝くん、大好きっ』
と言った。
遙の細い腰に手すらまわせないまま、他意のないその抱擁を木偶の坊のように僕はやり過ごす。
「今日、晴れてよかったね」
ビニールシートの反対側をバサバサとしながら、遙が言った。
「お花見はじめてなんだっ」
「学校で行ったりしなかったの?」
敷き終わったシートの四隅に、転がっていた石を置きながら僕は訊く。
「しないよー」
遙が笑いながらこたえる。
「あ、でも、もうそろそろ修学旅行があるよ」
「そっか。
もう中学三年生だもんな」
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