グレートヒェンは救われない

3/5
前へ
/414ページ
次へ
「誰かいるな。小さい――子供か?」  魔女狩りの一人が入ってきたらしかった。マルガレーテは何の反応も示さずにいると、目の前に若い男が現れた。 「魔女の子か……?」 「違う」  マルガレーテの口から、自分でも驚く程に淀みなく言葉が出てくる。 「あたしはこの家の魔女に嬰児の頃に拐された。調べればわかるはず」  男は自分では判断しきれないと諦め、マルガレーテを外に連れ出し本隊に意見を聞いた。結局その場はマルガレーテを保護することに決まり、マルガレーテは魔女狩りの本隊と本部に向かった。  その後、嬰児を奪われ一家が皆殺しにされたという事例が見つかり、時期も一致するということでマルガレーテは普通の人間の子供――それも哀れな孤児として扱われることになった。  マルガレーテは母親が大嫌いだった。外に出すこともなく家の中で娘を飼い殺す。これならば嬰児の時に殺されていた方がましだ。そんな憎い母親が死に、マルガレーテは外に出て生きていく方法を見つけ、行動に移した。まるで悪魔が憑いたかの如く、マルガレーテの知恵はよく回った。  魔女狩りの本部には、膨大な量の魔術書が収められていた。魔女を相手にするならば相手を知れ。マルガレーテは本部に預けられたまま自由に歩き回ることが出来たので、その魔術書を閲覧することが出来た。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加