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年月が経ち、いつの間にやらマルガレーテは知識だけは立派な魔女。
そして気付いた時には、魔女狩り本部は壊滅していた。
最初はただ、試してみたかっただけ。己の魔術――力を。
マルガレーテはもはや魔術の深淵にまで到達していた。彼女には複雑に暗号化された文章も、見落としてしまいそうな暗喩も、全て迷うことなく真の意味を見いだすことが出来た。
その力を気の向くままに振るったら、一つの組織に所属する全ての人間が死に絶えてしまった。ただ、それだけの話。
そして――気付くとマルガレーテは焦点街にいた。その時既に焦点街は現在と同じように整備されており、マルガレーテはわずか十二歳。
もう、自分の力はよくわかった。充分すぎる程わかった。マルガレーテは醒めた女だった。この力で人を殺したところでどうにもならない。自らの力に酔うこともない。ならばただ、この焦点街で流れに身を任せて生きていくだけだ。
焦点街には同じ第七世界の人間、魔女達も暮らしている。マルガレーテはそのどちらにも加わろうとは思わない。普通の人間から見ればマルガレーテはれっきとした魔女。だがマルガレーテは魔女達のように悪魔を信奉しようとは思わない。悪魔の加護がなくとも、マルガレーテは悪魔の如き所業をやってみせた。彼女にしてみれば、そんなものを信じるのは馬鹿の極みである。
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