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「一千万の首、氷のウィリアム・ウィルソン」
名前を呼ばれた少年は相手の顔を薄ら笑いを浮かべながら見つめ、そうだよ僕がウィリアム・ウィルソンだ――と芝居がかった調子で答えた。
「まさか適当に付けた名前がここまで浸透するとは思わなかったよ。まあ名前なんてものは所詮記号。何とでも好きなように呼べばいいさ。それで――」
お目当てはやっぱり僕の首かい――不敵な笑みを浮かべウィリアムは確認する。
「当然そうだ。まさかこんな子供だとは思わなかったが――貴様の能力はわかっている」
「『氷を操る』。だから『氷の』ウィリアム・ウィルソン。ふふふ」
ウィリアムは腰に下げた水鉄砲を取り出した。
「これは第一世界で今世紀に入ってから作られた玩具さ。大容量かつ高威力。危険だなんだの言われてすぐに販売中止になったっていう優れものだよ」
「俺は第九世界『血染めの満月』からここに来た」
「それは脅しかい? 第九世界ということはミトロプーロスの支配した世界。だから君は彼の死徒。吸血鬼には敵わないから諦めろとでも言いたいのかな? ふふふ。君はキューテインの説教を聞いた方がいいね」
ウィリアムは水鉄砲の引き金を引いた。高圧の水は銃弾の如き速さで相手に迫る。そして水は空中で凝固し、氷の弾丸となった。
しかし相手はそれを目視し、無駄のない動きでかわす。
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