ウィリアム・ウィルソン

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 吸血鬼は真祖――自らの力のみで吸血鬼となった者――ともなればならば、至近距離で放たれた音速を超える銃弾も避けることが出来る。この男は真祖ではなく死徒――真祖によって吸血鬼にされた眷属――であるが、第九世界「血染めの満月」より現れたということは恐らく焦点街が出来る前より死徒となっていたということになる。自分の力を磨き高めた死徒ということだ。 「すごいすごい。ただの死徒じゃないみたいだね」  引き金を引き続け、水を出し続けるウィリアム。見る見る地面には水溜まりが出来ていく。 「凍れ」  一瞬で全ての水は凍り付き、地面に氷が張る。  相手の足も濡れた地面に触れていたため凍り付く。 「氷などで俺の動きを止められるとでも思ったか?」  相手はまず右足に力を込めて高く上げる。氷は砕け、足は自由になる。左足も同様に引き抜き、相手は自信に満ちた笑みを浮かべる。 「吸血鬼は何よりもその力が強い。怖い怖い」  しかしウィリアムも依然不敵な笑みを浮かべている。  ウィリアムは水鉄砲の銃口を何やら弄くり、それを相手に向ける。 「無駄だ。そんなものはさっきかわして見せたはず」 「さてさて、それはどうかな?」  引き金を引くと、打ち寄せる大波の如き大量の水が発射された。視界いっぱいに広がる水に、相手は思わずだじろぐ。だが――
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