ウィリアム・ウィルソン

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「避けるまでもない。氷程度では俺の動きは止められんぞ」  水が身体にかかり、一瞬で凍り付く。量が量だけにかなり分厚い氷塊となったが、吸血鬼の力を持ってすればこの程度は何ともない。  気付くと、ウィリアムが眼前にいた。水で視界を奪われていた間に駆け出し、接近していたのだ。にやりと笑い、氷に覆われていない相手の右手にそっと触る。 「『触れた』よ」  同時に、目が掠れ、意識が朦朧としてくる。  その時の姿形のまま、固まり、息絶えた。 「心臓を止める、首を切り落とす。吸血鬼を殺す方法なんてのはいくらでもあるのさ」  ウィリアムはもはや話す相手がいなくなったというのに、実に愉快げに言葉を垂れ流し続ける。 「体内の水分全てを全て凍らせた。吸血鬼ならもしかすると助かるかもしれないけれど――悲しいかな、もうすぐ夜明けだ。哀れな吸血鬼は太陽に焼かれて死んでしまいました。ふふふ」  ウィリアム・ウィルソン。深紅の夜空団により一千万円の懸賞金をかけられた賞金首。 「深紅の夜空団は、本当に身勝手だよ」  しかしその口調は何処か楽しげでもある。  世界の焦点街に集まる有象無象共の夜が終わる。  そして焦点街は、また朝を迎える。
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