「止命」の少年と焦点街の双璧

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 城南高校はT都緑区に建つ私立高校である。学力はちょうど全体の中間程度。制服は男女共ブレザー。特別区であることからもわかるように、異違羽東部からは遠く離れている。  弐条穢土と樹洞更良はこの高校の生徒である。普通に異違羽東部駅から城南高校に向かおうとすれば、始発に乗らなければ間に合わない。 「焦点街には塞(さえ)の神の標識がある。どういうことかは行けばわかる」  更良はこう言い、穢土を連れて朝の焦点街に出た。  時刻は八時過ぎ。電車ではどうやっても間に合わない時間。  T字路の前で更良は立ち止まった。 「見て」  指差す先には何も描かれていない、真っ白な標識が出ている。 「行くよ」  更良はそう言うと穢土の手を握った。穢土はその恐ろしく冷たい手に驚いた。  穢土の手を取り、更良は真っ直ぐにT字路に突っ込んでいく。目の前には民家の生け垣があり、ぶつかるかと思い穢土は目を閉じる。立ち止まることは更良が許さず、そのまま進んでいくが、何の感触もない。
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