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街のメインストリートと思わしき大通りを歩いていると、様々な人種が歩いていることがわかる。どう見ても日本人ではないような人ばかりであり、さらに言えば服装も奇抜である。
「汝、武器を持つ者か?」
後ろから声をかけられ振り向くと、小柄な老人が黄色い歯を剥き出しにして笑っていた。
「何を言ってるんだ……?」
今のご時世、武器を持ち歩いているような人間は警察官かやくざくらいだろう。穢土はどう見てもただの高校生であり、武器の類を持っているようには絶対に見えない。
老人は目を見開いて穢土の顔を覗き込む。
「武器とは刃や銃弾ばかりを言うのではない。己の内の力もそうであるし、怪忌(かいき)も味方につければ武器となる。何も持たずにこの街で暮らす者は、そう」
老人の手が凄まじい速さで穢土の首に伸び、締め上げる。
「死ぬ」
どう考えても老人とは思えない力。穢土は声を上げることも息をすることも出来ずに眼球が迫り出してくるのを感じた。
「君は運がないね」
澄み渡るソプラノ。続いて響く甲高い音――恐らくは発砲音。そして声も上げずに頭部が弾け飛ぶ老人。
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