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――キンコーンカンコーン
あ「ふあ~眠い…。耐えるの大変だったぁ。」
澪「いや、全然耐えれてなかったからね。清々しいくらい敗北してたからね。」
私たちはギリギリ授業に間に合った。私たちが教室に着いた時には、佐藤さんはすでに、自分の席についていた。
寝てたわけじゃなかったのかも…余計なお世話だったかな。
あ「ふあ~。」
私はもう一度大きな欠伸をすると
「永江さん」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
振り返るとそこには、佐藤さんがいた。
茉「…あの、えと移動教室…教えてくれて…あ、ありがとう。…それから…えと…あの、あの時の」
あ「どーいたしまして。あはは。なんのこと?忘れちゃった。」
佐藤さんが言いたいことはわかった。多分"しゅんちゃん"と叫んだことだろう。
茉「…え?覚えてない…の?」
あ「…?だから、なんのこと?」
もちろん嘘だ。だけど、困った佐藤さんの顔が、あまりにも泣きそうだったから。私は忘れたことにした。時に優しい嘘も必要なのだ。
あ「私の名前、よく知ってたね。」
茉「……だって、同じクラスだし。」
同じクラスといっても、私と佐藤さんは接点が一切なかった。でも、私はいつも一人でいる佐藤さんが、ちょっと気にかかっていたということもあり、名前を知っていた。
まさか佐藤さんも、私の名前を覚えていてくれたなんて。…正直嬉しい。
あ「…そっか。あかりでいいよ。同じクラスだし。」
私がそういうと佐藤さんは少し表情をやわらげ
茉「…茉咲。私のことは茉咲でいい。あかり…ちゃん。」
と言った。
私が大きく頷くと、茉咲ちゃんは早歩きで教室の方へと歩いて行った。
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