1人が本棚に入れています
本棚に追加
どうして、と。
彼女に聞かれる事を想定していた。
どうして来ないの。そう尋ねる声さえ想像していた。
「どうして」「何で」は彼女の口癖だ。
彼女が他人に事を問う時、その言葉を聞かなかったことはない。
だから「飽きたから」という、中学生にありがちな定型文を、答えを用意していた。
これならば、彼女に見限られると思っていた。
けれど宝は部活に来ない幼なじみを受け止めて、そればかりか、俺の考えさえ見通しているようだった。
尋ねるばかりか「来てね」の一言さえ口にしなかった彼女の瞳を思い出す。
最初のコメントを投稿しよう!