破壊

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どうして、と。 彼女に聞かれる事を想定していた。 どうして来ないの。そう尋ねる声さえ想像していた。 「どうして」「何で」は彼女の口癖だ。 彼女が他人に事を問う時、その言葉を聞かなかったことはない。 だから「飽きたから」という、中学生にありがちな定型文を、答えを用意していた。 これならば、彼女に見限られると思っていた。 けれど宝は部活に来ない幼なじみを受け止めて、そればかりか、俺の考えさえ見通しているようだった。 尋ねるばかりか「来てね」の一言さえ口にしなかった彼女の瞳を思い出す。
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