1人が本棚に入れています
本棚に追加
血の海を割るようにして、空間が裂けている。
広い室内で悠然と佇んでいる筈の王座は、裂け目から覗く暗い闇に塗り潰されてしまっていた。
――力を欲し、命を屈する貴様は人間ではない
――獣そのものだ
見覚えのある紫の袖と、それに通る腕が闇から覗く。
枯れた枝のようにやせ細ったそれは私を指さし、こう宣言した。
――これは、呪い
――貴様の真を現す呪い
黒く変色した爪先が、くるりと円を描く。
見終えると同時に、決して逆らえない、強烈な睡魔が押し寄せる。
最初のコメントを投稿しよう!