野獣

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血の海を割るようにして、空間が裂けている。 広い室内で悠然と佇んでいる筈の王座は、裂け目から覗く暗い闇に塗り潰されてしまっていた。 ――力を欲し、命を屈する貴様は人間ではない ――獣そのものだ 見覚えのある紫の袖と、それに通る腕が闇から覗く。 枯れた枝のようにやせ細ったそれは私を指さし、こう宣言した。 ――これは、呪い ――貴様の真を現す呪い 黒く変色した爪先が、くるりと円を描く。 見終えると同時に、決して逆らえない、強烈な睡魔が押し寄せる。
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