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(二人か、槍を持っているが、大した腕では無さそうだな。二人一まとめに斬って捨てるのに雑作は無さそうだ。)
ハンベエはそんな事を考えていた。師のフデンの申し渡しを受けて以来、誰を斬ろうかな、どこかに手頃な獲物はいないかな、としょっちゅう回りを窺(うかが)っている。ギラギラした目付きをする男ではないので、ヌーボーとつっ立ってるようにしか見えないのだが。
そんなオッカナイ事を考えてる男がすぐ側にいるとは知るはずもない門衛は相方の戻ってくるのを待ちながら、神妙な顔をして門の横に佇(たたず)んでいた。
二十分も待っただろうか?、先ほどの門衛を引き連れて少し身分の高そうな女官がやって来た。
「この札に押された印形はまごうかたなきバンケルク将軍のものです。あなたは、バンケルク将軍の使者に間違いないようですね。手紙をいただきましょう。」
女官はやって来るなり、ロキにこう切り出した。
ロキは女官をチラと見て、
「その前に、預けた札を返して頂いていいですか?」
と手を出した。
「この札をですか?・・・・・・ここに辿り着いた上は、この札は必要ないものだと思うけど、返して欲しいと言うなら返しましょう。」
女官はロキに札を返してくれた。
「それで、王女様はどこにおられますか?」
ロキは札を仕舞いながら女官に尋ねた。大の大人を相手に少しも腰の引いたところの無い、落ち着いた態度である。
「まあ、この子供ったら、王女様はあなたが目通りできるような身分の人ではないのですよ。私は王女様の側に仕える者です。手紙は私が王女様に届けますから、こちらに出しなさい。」
女官は呆れたように言った。
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